第三章-10  冷たい夜風がつなぐ未来

秋はあっという間に過ぎ去り、気づけば冬の冷たい空気が町を包んでいた。季節の移り変わりは早く、年の瀬が近づくと、僕は冬休みを利用して実家に戻り、家族とともに年越しを迎えることになった。こたつの温もりに包まれながら、改めて箱...

第三章-9 秋の風が運ぶ期待

担任のノブちゃんから放課後に職員室に呼び出され、内定通知を受け取った瞬間、心臓がドキリと跳ね上がるのを感じた。その場の空気が一瞬止まったような気がした。目の前に差し出された封筒の重みが、これからの自分の未来を決定づけるも...

第三章-8 冷静に、賢明に、それでもなお

面接が終わり、僕はゆっくりと息を吐いた。もう僕の心は決まっていた。ここで働きたいと。でも実際、ここに来る前には既に別のレストランから内定をもらっていた。そのレストランも一流であり、間違いなく自分にとって素晴らしいチャンス...

第三章-7 揺るぎない一歩 

オーミラドーの門をくぐると、エントランスまでの数メートルがやけに長く感じられた。石畳の道が続き、その先に重厚な扉が見える。扉の前には、黒いスーツを着たスタッフがまるでお客様を迎えるかのように立っていた。彼らの整った姿勢と...

第三章-6 意志へと変わる瞬間

僕はその日、どうにもそわそわしていた。授業中も心ここにあらずで、昼休みが来るのをただ待っていたようなものだった。昼になると、トメちゃんたちと一緒にいつものようにSOGOのフードコートへ向かうことにした。学校から歩いて10...

第三章-5 思わぬ行動

”箱根オーベルジュ・オーミラドー オーナーシェフ勝又登氏” 黒板の右端に縦書きでそう書かれている。 今日は外来講師の授業の日だ。 箱根というところにもちろん行ったことはないので山の方くらいのイメージしかなく、避暑地的なと...

第三章-4 内定通知書

夏休みが終わると、登校する生徒が気のせいか少なくなってる気がした。空席がちらほらと目立つようになり、廊下の人通りもなんとなく減ったような、そんな気がした。担任が言うには、毎年夏休みを境に学校を辞める子が少なからずいるのだ...

第三章-3 ふわふわした面接

卒業まではあっという間だ。たった1年しかない。4月に入学したばかりなのに6月にはもう、就職活動を始めならなければならなかった。僕はフランス料理の道に進むと決めていたけど、どの道に進むのか決めかねている子もいた。特にフレン...

第三章-2 仲間がいたから

寮で村田とトメちゃんの二人が同じクラスだった。当たり前のようにこの三人で一緒に学校に行くことになる。 そして初日から僕ら三人は、開始時刻の30分以上も前に学校に行き、教室の一番前の真ん中を陣取った。教室を見渡すと、ざっと...

第三章-1 入学式と寮生活

昨日は眠れなかった。福井駅から特急サンダーバードに乗って大阪に向かう。よそ行きの服を着た母の隣で、僕は買ったばかりのスーツにぎこちなく包まれ座っている。今日は辻調理師専門学校の入学式の日だ。会場は大阪城ホール。そもそも入...