第一章-21 荒田西洋料理ふたたび

坂口が抜けた後のベースは、サックスの常脇が担当することになった。ブラスバンド部だからだろうか。楽器は一通りなんでも出来るようだ。器用なやつだ。ただ、坂口が抜けてからというもの、みんなで集まって練習することも徐々に減りはじ...

第一章-22 はじめて作るフランス料理

毎週、欠かさず「料理天国」を見ていたから、何か簡単なものくらい作れそうな気がしていた。だけど、どのレシピもうちでは見たこともない食材が必ずと言っていいほど出てくる。ブーケガルニとかワインとか、そんなのハニー(近所のスーパ...

第一章-23 俺、才能あるかも

一晩かけてコトコトと、フォンブラン・ド・ヴォライユと言う長ったらしい名前のブイヨン出汁を作ったのはいいけど、これを濾すのに一苦労した。鍋からお玉ですくってザルにあけるのだけど、お玉より鶏ガラの方が大きいのでコンロがこぼれ...

第一章-24 真っ赤なオーブン

あれから調子に乗って何度かフランス料理の真似事をした。そして、段々と欲が出てきた。スパイスや調味料を揃えなきゃ、道具もあれもこれも必要だ。そしてオーブンが欲しい…特にフランス料理を作るのにはオーブンが無いのは致命的だった...

第一章-25 入学式と寮生活

昨日は眠れなかった。福井駅から特急サンダーバードに乗って大阪に向かう。よそ行きの服を着た母の隣で、僕は買ったばかりのスーツにぎこちなく包まれ座っている。今日は辻調理師専門学校の入学式の日だ。会場は大阪城ホール。そもそも入...

第一章-26 仲間がいたから

寮で村田とトメちゃんの二人が同じクラスだった。当たり前のようにこの三人で一緒に学校に行くことになる。 そして初日から僕ら三人は、開始時刻の30分以上も前に学校に行き、教室の一番前の真ん中を陣取った。教室を見渡すと、ざっと...

第一章-27 ふわふわした面接

卒業まではあっという間だ。たった1年しかない。4月に入学したばかりなのに6月にはもう、就職活動を始めならなければならなかった。僕はフランス料理の道に進むと決めていたけど、どの道に進むのか決めかねている子もいた。特にフレン...

第一章-28 内定通知書

夏休みが終わると、登校する生徒が気のせいか少なくなってる気がした。空席がちらほらと目立つようになり、廊下の人通りもなんとなく減ったような、そんな気がした。担任が言うには、毎年夏休みを境に学校を辞める子が少なからずいるのだ...

第一章-29 思わぬ行動

”箱根オーベルジュ・オーミラドー オーナーシェフ勝又登氏” 黒板の右端に縦書きでそう書かれている。 今日は外来講師の授業の日だ。 箱根というところにもちろん行ったことはないので山の方くらいのイメージしかなく、避暑地的なと...

第一章-30 意志へと変わる瞬間

僕はその日、どうにもそわそわしていた。授業中も心ここにあらずで、昼休みが来るのをただ待っていたようなものだった。昼になると、トメちゃんたちと一緒にいつものようにSOGOのフードコートへ向かうことにした。学校から歩いて10...