第一章-2 父の手のぬくもり

お店を開くには500万円という大金が必要だったが、それはなんとか用意することが出来た。方々駆けずり回って集めたお金だ。もちろんその大半が借金である。いや、すべてが借金だと言ってもいいくらいだった。 浮舟は和食のお店だった...

第一章-1 小さな料理屋「浮舟」

僕がフランス料理の道を選んだのは、運命だったように思う。フランス料理という、一見すると華やかな言葉の響きとは裏腹に、その道はひどく険しく辛いことだらけだ。フランス料理の世界に限らず、どの料理の世界でも、いや、どの分野であ...