第一章-11 13歳の誕生日
僕は進明中学校に進学した。松本小学校とは反対方向に歩いて10分のところにある。進明中学は市内でも悪名高く、特に僕の2つ上の先輩たちはよく警察沙汰の事件を起こしていた。廊下を原チャリが走るは、窓ガラスをバットで割って歩くは...
僕は進明中学校に進学した。松本小学校とは反対方向に歩いて10分のところにある。進明中学は市内でも悪名高く、特に僕の2つ上の先輩たちはよく警察沙汰の事件を起こしていた。廊下を原チャリが走るは、窓ガラスをバットで割って歩くは...
文化包丁を研ぎ終わると包丁と砥石を片付け、父は別の包丁を出してきた。その包丁は木で出来た鞘に収まっていて、鞘を抜くと、そこから細身で長い、まるで小さな刀のような包丁が現れた。その刃渡りは30㎝以上はあっただろう。表面が鏡...
転校は、思ってたより大げさなものではなかった。気持ちはさほど揺れず、”ああ、今日で進明に通うのは最後だなぁ”くらいしか思わなかった。5月14日。中学2年生の新学期が始まって1ヶ月とちょっと。学年が上がるごとにクラス替えが...
テーブルに座るやいなや、山盛りに盛られた唐揚げには目も向けず、早口で母に疑問をぶつけた。「ねえ、俺の押入れにあった料理の本、お父さんのやろ?」母は、素っ気なくそれを認めた。「そうや。置いとくとこないからそこに置いといて」...
叶わなかった父の夢。それは、古ぼけた段ボールの中で何年も眠っていた。そして、突如、僕の目の前に現れた。 ブオーン、という乾いたエンジン音が聞こえた。道路と家の駐車スペースの境には、水はけのために路肩があり、それをバックで...
ダンボール箱はそのままにしてある。押入れから出したまんまだ。どうしても諦めきれなかった。僕は、毎日のようにページをめくった。読んでる、と言うより、ただ眺めているだけだった。レシピがぎっしりと書かれているが、その横書きの文...
アルバイトはその後も自然に舞い込んできた。親方の手伝いもたまにしつつ、近所の土建会社の社長からも声がかかった。きっと親方から聞いたのだろう。駐車場の白線引きから工事中の旗振り、引越しの手伝いなど、料理とは関係ない仕事ばか...
とりあえず資料を取り寄せてみよう。このまま何もせずにはいられなかった。いったい、料理学校っていくらかかるんだろう。 今なら家に誰もいない。両親はまだ仕事から帰ってきていない。弟は友達と遊びに行った。祖母は近所におしゃべり...
僕はより一層アルバイトに精を出した。一円でも多くお金を貯めて学費の足しにするんだ。そう、強く思ったからだ。だが、その決意は長くは続かなかった。ごく普通の高校生の日常というものが僕の決意を無力化していく。放課後になるとカラ...
「俺、学校やめるわ」ベースをぶら下げたまま坂口が突然の告白をした。その衝撃的な言葉とは裏腹にとても爽やかな笑顔だった。「えっ、ど、どうしたんだよ?」真っ先にボーカルの山田が驚いて振り向いた。その声はボーカルマイクを通して...