1. HOME
  2. ブログ
  3. プライベートのこと
  4. 冬のアイスランド

BLOG

小川シェフのブログ

プライベートのこと

冬のアイスランド

冬のアイスランド

南青山のカフェで、パートナーと冬の旅の話をしました。
テーマはアイスランド。しかも、真冬のアイスランドです。
一本の動画をきっかけに、旅の輪郭が少しずつ変わっていきました。

僕は、旅というものは「どこへ行くか」以上に、「どんな感覚で世界を受け取るか」なのだと思っています。

以前から、パートナーとは「いつかアイスランドに行きたいね」と話していました。ただ、そのとき僕たちが思い描いていたのは、どちらかといえば夏のアイスランドでした。白夜の空、緑の大地、広がる草原。多くの人がイメージする、明るく開放的な北の島の姿です。

でも、その印象が変わった瞬間がありました。

きっかけは、一本のYouTube動画でした。そこに映っていたのは、真冬のアイスランド。凍てついた大地。空気そのものが透き通っているような氷の風景。人間が手を加えたものではなく、自然がただ自然のままに造形した世界でした。

それを見た瞬間、僕は「あ、冬もいいかもしれない」と思いました。

旅は、ときに自分の中の常識を静かに裏切ってくれます。アイスランドに行くなら夏。自然を楽しむなら、暖かくて動きやすい季節。そう考えるのは、とても自然なことです。でも本当にそうなのか。寒さの中でしか見えない美しさ、静けさの中でしか感じられない豊かさもあるのではないか。そんな問いが、僕の中に生まれました。

レイキャビックの街並みも気になっています。冬の澄んだ空気の中に、カラフルな屋根が並ぶ光景。北欧の絵本のようで、どこか愛らしい。街の温度と、外側に広がる圧倒的な自然。その対比に、強く惹かれます。

そしてもうひとつ、僕が魅力を感じているのは、オフシーズンの静けさです。観光客が少ない時期だからこそ、その土地の呼吸に近づける気がします。賑わいの中で消費する旅ではなく、静けさの中で受け取る旅。誰かが用意した正解をなぞるのではなく、自分たちの感覚で、その場所との関係をつくっていく旅です。

これは、僕が「食」に向き合うときの感覚にも近いものがあります。

食もまた、ただお腹を満たすためのものではありません。誰と食べるのか。どんな場所で食べるのか。どんな季節に、どんな気持ちで味わうのか。そのすべてが重なって、ひとつの体験になります。そこには、多様な価値観があり、選択のチカラがあります。

僕は、食の可能性を信じています。食は、人と人をつなぎ、文化を越え、未来をつくる力を持っている。旅も同じです。見知らぬ土地に身を置くことで、自分の価値観が少し広がる。世界には、自分が当たり前だと思っていたものとは違う美しさがあると知る。その気づきは、日々の選択を変えていきます。

冬のアイスランドに惹かれるのは、単に絶景を見たいからだけではありません。寒さの中にある豊かさを、自分たちの身体で感じてみたいのです。便利さや快適さだけを追いかけるのではなく、少し不自由で、少し厳しい環境の中にある本質的な美しさに触れてみたい。そういう旅に、今の僕は惹かれています。

僕もパートナーも、暑さより寒さの方が得意です。凍えながら歩く旅が、むしろ好きだったりします。温かい飲み物を手に、冷たい空気の中を歩く。暗い空を見上げる。風の音を聞く。そんな時間の中で交わす会話は、きっと普段より少し深くなる気がします。

まずこの夏、僕たちはノルウェーへ行きます。北欧の自然や暮らしに触れることで、また新しい感覚が開かれるかもしれません。そしてその先に、冬のアイスランドという旅が見えてきています。

世界は、まだまだ知らない表情を持っています。

大切なのは、決めつけずに選び直すこと。

旅も食も、その選択の積み重ねが、僕たちの未来をつくっていくのだと思います。

関連記事