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小川シェフのブログ

仕事のこと

なぜ、nocsは地方へ行くのか。宮崎で改めて確信した「料理人の新しい役割」

nocs

料理人は、厨房の中だけで成長するものではない。
最近、そんな思いがますます強くなっています。

6月28日、29日の2日間、私が主宰する若手料理人コミュニティ「nocs」のメンバーとともに、宮崎県の日南市・飫肥(おび)と新富町を訪れました。

nocsは、20〜30代の料理人やパティシエ、サービススタッフが集まり、「料理人の可能性を広げる」ことを目的としたコミュニティです。

料理技術を学ぶだけではなく、生産者や地域とのつながり、ブランドづくり、地方創生、経営など、これからの時代に料理人が身につけるべき視点を学び、実践する場でもあります。

今回の視察も、その活動の一つです。

「地域にはどんな人がいて、どんな想いで仕事をしているのか。」
「料理人は、その価値をどう社会へ届けられるのか。」

その答えを探すために、実際に現地へ足を運びました。


飫肥には、町の未来を本気で考える人がいる

最初に訪れたのは、宮崎県日南市の城下町・飫肥。

案内してくださったのは、PAAK DESIGN代表の鬼束準三さんです。
鬼束さんとは、2018年に私が日南市で開催したイベントで出会いました。

それ以来のお付き合いで、今年6月にオープンしたベーカリーカフェ「おびにたすき」も、構想段階からご相談をいただき、ブランドづくりについて何度も意見交換をしてきました。

今回改めて現地を訪れ、「おびにたすき」をはじめ、鬼束さんが運営する古民家ホテル「茜さす飫肥」や「PAAK HOTEL 犀」を案内していただきました。

町を歩きながら感じたのは、鬼束さんは建物をつくっているのではなく、「町に人が集まる理由」をつくっているということです。

古民家を宿にすることが目的ではありません。
そこへ人が訪れ、その町を好きになり、また帰ってきたくなる。
そんな体験そのものをデザインしているのです。

地方創生という言葉はよく耳にします。
でも、現場を見ると、その正体は派手なイベントでも、大きな予算でもありません。
地域を本気で愛する人が、目の前の一つひとつを丁寧に積み重ねること。

その積み重ねが、町の文化になり、未来になっていくのだと感じました。


芋焼酎を飲みながら語った、飫肥の未来

夜は鬼束さんと芋焼酎を飲みながら、遅くまで語り合いました。

話題は、飫肥という町の未来。
そして、nocsと一緒に何か面白いことができないかという話でした。

料理人がこの町へ来て、生産者と出会い、地域を知る。
ここでしかできないイベントを開催する。
若い料理人が町の魅力を発信する。
そんなアイデアが次々と生まれ、気づけば時間を忘れて話し込んでいました。

地方創生は、一人ではできません。同じ未来を見ている仲間が集まり、語り合う時間から、新しい挑戦は始まるのだと思います。


新富町で出会った「挑戦する人たち」

翌日は、新富町へ。

今回、新富町を案内してくださったのは、地域商社として町づくりに取り組む「こゆ財団」の皆さんです。
宿泊の手配から視察ルートの調整、食事、そして夜のBBQまで、本当に細やかに準備してくださいました。

視察を受け入れるだけでも大変なことですが、参加したメンバー全員が地域の魅力を存分に感じられるよう、細部まで心配りをしていただいたことに感謝しています。

そして今回訪問したのは、

宮崎牛や経産牛を育てるアグテック。
肥料も除草剤も使わず、自然と向き合いながら農業を続ける高山農園。
色鮮やかなカラフルトマトを栽培する、そらとま農園。

それぞれ作るものは違います。
でも共通していたのは、「良いものを作る」だけで終わっていないことでした。

どうすれば地域に雇用が生まれるのか。
どうすれば次の世代へつないでいけるのか。
どうすれば、この土地の価値をもっと多くの人へ届けられるのか。

皆さんが考えていたのは、自分の商品ではなく、地域の未来でした。

そして夜は、こゆ財団の皆さんが企画してくださったBBQ交流会へ。
今回訪問できなかった生産者の方々も大勢集まってくださり、料理人と生産者が立場を越えて語り合う、とても温かい時間になりました。

普段は、それぞれが自分の現場で仕事をしています。
料理人は料理をつくり、生産者は食材を育てる。
だからこそ、お互いの想いや苦労、未来への考えを直接語り合える機会は決して多くありません。

お酒を片手に笑い合い、ときには真剣に地域の未来を語り合う。
そんな時間を通して、参加したnocsメンバーも多くの刺激を受けたと思います。

地方創生は、人と人とのつながりから始まります。
今回のBBQは、そのことを改めて実感させてくれる、忘れられない夜になりました。

新富町の生産者の皆さんとのご縁は、ここからが本当のスタートです。


料理人は、生産者とお客様をつなぐ存在になれる

今回の視察で、改めて確信したことがあります。

料理人は、食材を調理するだけの仕事ではありません。

生産者の想いを知る。
地域の歴史を知る。
文化を知る。
そして、その価値を料理という体験に変え、お客様へ届ける。

料理人は、生産者とお客様をつなぐ「翻訳者」になれる。
だからこそ、厨房の外へ出ることには大きな意味があります。

実際に畑へ行く。
牧場へ行く。
町を歩く。

その経験が、一皿の料理に深みを与えます。


なぜ、nocsは地方へ行くのか

今回参加した若い料理人たちは、きっと料理だけでは学べないものを持ち帰ったと思います。

料理の技術は、厨房で磨くことができます。
でも、料理人としての視野は、厨房の外へ出なければ広がりません。

だからnocsでは、これからも地方へ行きます。
料理人が地域と出会い、生産者と出会い、新しい仲間と出会う。

その積み重ねが、日本の食の未来を少しずつ変えていくと信じているからです。
そして、地方には、まだ世の中に知られていない価値が数多く眠っています。

その価値を見つけ、磨き、料理という体験を通して社会へ届ける。
それもまた、これからの料理人に求められる大切な役割だと私は考えています。


最後に

今回お世話になった鬼束さん、こゆ財団の皆さん、そして新富町でお会いした生産者の皆さん、本当にありがとうございました。

今回の視察は、「勉強になりました」で終わるものではありません。ここで生まれたご縁を、これから形にしていくことが大切だと思っています。

飫肥でも、新富町でも、nocsだからできることがきっとある。
料理人だからこそ生み出せる価値がある。
私は、そう信じています。

「料理人は料理だけをつくる人」で終わる時代は、もう終わりです。

これからの料理人は、人をつなぎ、地域をつなぎ、文化をつなぎ、未来をつくる存在になれる。
宮崎で過ごした2日間は、そのことを改めて確信させてくれた、とても大切な時間でした。

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