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小川シェフのブログ

仕事のこと

料理人にとって厨房とは

料理人にとって、厨房は単なる料理を作る作業場ではないと思う。僕はレストランを二つ経営し、地方のレストランの監修やアドバイザーなんかもやってるけど、こうやっていろんな活動をしていると、厨房が料理人にとっていかに重要かを深く感じる。

料理人には「厨房を持つ料理人」と「厨房を持たない料理人」の二つに分かれる。前者は、自分のレストランを持つオーナーシェフや、あるレストランで勤務するシェフを指す。後者は、フリーランスの出張料理人のように、固定の厨房を持たずに活動する人々のこと。だけど、出張料理人も家のキッチンで仕込みをするのだろうから、一概に厨房を持たないとは言えないかもしれない。ただ、それは家庭用の台所であり、プロフェッショナルな厨房とは異なる。

僕にとって、厨房は自分を表現し、インスピレーションを得る場所でもある。最新の機器が整っているかどうかではなく、それ以上に料理人としての感性が研ぎ澄まされ、リラックスできる環境であることが大切だと思っている。僕が様々なプロジェクトを同時こなすことができるのは、自分の厨房があるからこそ。迷った時や悩んだ時、追いつめられた時には、この厨房で物事を整理し解決策を見出してきた。

では、厨房を持たない料理人はどうしているのだろうか。彼らにとって、料理を作るための場所があれば十分なのかもしれない。もしくは、厨房を持てない状況にあるため、やむを得ず家庭の台所で料理をしているのかもしれない。おそらく後者が現実なのだろう。これは仕方のないことかもしれないが、厨房が料理人にとってどれほど大切なのかを分かっていて欲しいと思う。

厨房は単なる料理を作る場所ではない。それは料理人のアイデンティティを形作り、クリエイティビティを刺激するスペースのこと。料理人にとって厨房は、自分の感性を表現するための舞台であり、心を落ち着かせ新たなアイデアを生み出す聖域でもある。

なんか最近厨房のことをよく考えるなあ。今までに僕は100とまではいかないけどそれに近い数の厨房を設計してきた。今も同時に5つの厨房設計を同時進行している。そして4月にはもう一つ、大掛かりなプロジェクトの厨房設計に入る。

前回の投稿で厨房デザインに重きを置いてると書いたが、今回は料理人にとっての厨房の存在意義を考えてみた。僕が設計する厨房は、単なるレイアウトではない。一つひとつ、そこには料理人として、という立場と誇りが詰まっている。

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