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小川シェフのブログ

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その料理は、体験になっているか

BLOG その料理は体験になっているか

原価高騰の時代に、飲食店の利益をどう守るのか。
僕はその答えは、仕入価格だけではなく、日々の意思決定の質にあると思っています。

原価が上がっている。だから利益が出ない。
飲食の現場で、そうした相談を受けることがあります。
もちろん、仕入原価はとても重要です。
食材価格の上昇は、経営に直撃します。
世界的な物流の変化、気候変動、為替、労働力不足。いまや一つの店の厨房も、グローバルな市場とつながっています。

だからこそ僕は、原価を軽く見ていいとは思いません。

ただ一方で、現場を見ていると、利益が出ない理由を「原価のせい」だけにしてしまう店ほど、本質的な問題から目をそらしていることが多いと感じます。

利益を左右しているのは、原価そのものではありません。
本当に問うべきは、意思決定の質です。

たとえば、売れていないのに惰性で残しているメニュー。
店のコンセプトとはズレているのに、なんとなく続けている仕入れ。
お客様の価値観や体験価値を考えず、周りの相場だけで決めた価格。

これらはすべて、数字の問題に見えて、実は日々の判断の積み重ねです。原価率はコントロールすべき大切な指標です。しかし多くの場合、それは原因ではなく結果です。意思決定の基準が曖昧なまま運営すれば、メニューも、仕入れも、価格も、少しずつズレていきます。そして最後に数字が崩れるのです。

美味しい料理は、お客様を満足させ、リピートにつながります。
でも僕は、それだけでは足りないと思っています。

良い食材を仕入れれば、自然と満足が生まれるわけではない。
何を届けたいのか。
誰に、どんな価値を感じてほしいのか。
その問いに向き合い続けたとき、はじめて料理は“体験”になり、お客様の満足度は本当の意味でピークに達するのです。

利益が出ている店は、意外なほどシンプルです。

「何をやるか」よりも、「なぜそれをやるか」が明確です。
だから、やめる判断も、続ける判断もブレません。新しいメニューを増やすときも、価格を上げるときも、仕入れ先を変えるときも、自分たちの基準に照らして考えています。

飲食店は、料理を売る場所であると同時に、人と人が価値を共創する場所です。作り手の想い、お客様の多様な価値観、生産者の努力。その接点にこそ、本当の価値があります。だからこそ経営判断も、単なるコスト削減ではなく、どんな未来をつくるための選択なのかを問うべきです。

利益は計算だけで作るものではありません。
日々の選択のチカラによって、少しずつ積み上がっていくものです。
数字を変えたければ、まず意思決定の基準を変える。

僕はそう思います。原価をコントロールすることも大切です。
けれど、それ以上に、自分たちが何を大切にし、何を選び、何をやめるのか。その覚悟こそが、これからの店の未来をつくっていくのです。

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