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小川シェフのブログ

プライベートのこと

「YBA & BEYOND」展_表現する覚悟

先日、パートナーに誘われて新国立美術館で開催されている「YBA & BEYOND」展を訪れた。

1990年代のイギリスで生まれた「YBA(Young British Artists)」というムーブメントを紹介する展示です。既成概念にとらわれず、自分たちの表現で世界に挑もうとした若いアーティストたちの作品が並び、その時代の空気や熱量が伝わってくるような展示でした。

実は昨年ロンドンを訪れたこともあり、僕にとってこの展示はとても興味深いものであり、どこか不思議な共感も覚えました。

1990年代という時代は、僕にとっても特別な時間です。ちょうど料理人としてシェフになることを夢見て、必死に修行していた頃でした。後半の1997年以降はフランスに渡り、厨房で毎日必死に料理と向き合っていました。目の前の一皿を作ることに夢中で、ただひたすらに技術を磨き続ける日々。その時、イギリスはすぐそこにありました。

けれど当時の僕は、厨房という小さな世界の中で無我夢中でした。同じ時代、海を越えたすぐ近くのイギリスで、若いアーティストたちがアートで世界を揺さぶろうとしていたのだということを知り、なんとも言えない感慨が込み上げてきました。

でも考えてみれば、料理もアートも本質は同じなのかもしれません。どちらも人の心を動かすものです。誰かの価値観を少しだけ広げたり、これまで見えていなかった景色を見せたりする。そんな力を持っています。

僕はずっと「食のチカラで未来をつくる」と言い続けています。食というと、どうしても栄養や美味しさ、あるいはビジネスとして語られることが多い。でも僕は、それだけではないと思っています。食には、人と人をつなぎ、新しい価値観を生み出し、多様な文化を交差させる力がある。つまり、未来をつくる可能性があるのです。

YBAのアーティストたちが、自分たちの表現で既成概念を壊しながら世界に挑んだように、僕たちもまた自分のフィールドで未来に問いを投げかけることができるはずです。料理人なら料理で。生産者なら食材で。食べる人もまた、その選択のチカラで未来に関わることができる。

大切なのは、自分の表現を信じることだと思います。

共創という言葉がありますが、未来は一人でつくるものではありません。多様な価値観が出会い、重なり合い、対話することで、新しい景色が生まれます。食の世界も同じです。料理人、サービマン、生産者、食べる人。それぞれが自分の表現を持ち寄ることで、食の可能性はもっと広がっていく。

展示を見ながら、僕はふと、若い頃の衝動を思い出した。「自分の表現で未来を切り拓きたい」。あの頃、言葉にすることもなく抱いていた感情です。

時代を動かすのは、きっと大きな力ではありません。 「表現する覚悟」を持った一人ひとりの行動なのだと思います。

料理もまた、未来への表現です。 僕はこれからも、食の可能性を信じながら、人と人が共創する世界を料理で描いていきたいと思います。

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