1. HOME
  2. ブログ
  3. 仕事のこと
  4. 師の教え、その魂_勝又登を偲ぶ会

BLOG

小川シェフのブログ

仕事のこと

師の教え、その魂_勝又登を偲ぶ会

昨夜、胸の奥が静かに熱くなる時間を過ごしました。
去年他界した我が師匠、勝又登シェフ(ムッシュ)を偲ぶ会が、南青山で開かれたのです。

会場には170名もの人が集いました。あの鉄人、坂井宏行シェフや、ギンザトトキの十時亨シェフをはじめ、名だたるレジェンドの姿がありました。その光景を前に、ムッシュがどれほど多くの人に影響を与え、日本の食文化を押し上げてきたのかを、あらためて思い知らされました。

1990年代、最盛期のミラドー。僕はその厨房に立っていました。毎日100人を超えるお客様を、わずか6〜7人で迎え撃つ。朝4時に厨房に入り、終わるのは深夜。今振り返っても、あれはまさに戦場でした。しかし僕は断言できます。あの過酷な現場こそが、今の自分の核をつくったのだと。

ムッシュから教わったのは、料理の技術だけではありません。素材と向き合う姿勢、妥協を許さない覚悟、そして「料理人は人を幸せにする仕事だ」という誇りでした。食の可能性を、誰よりも信じていた人だったのです。

僕は今、「食のチカラで未来をつくる」という理念を掲げています。それは決してきれいごとではありません。食は、国境を越え、文化をつなぎ、多様な価値観を尊重し合うきっかけになります。世界が分断や不安に揺れる時代だからこそ、同じテーブルを囲むことの意味は大きい。ムッシュの背中は、その原点を僕に教えてくれました。

昨夜、かつて戦場のような厨房で共に立った仲間たちと、夜が明けるまで語り合いました。かつては厳しい上下関係の中で必死に食らいついていた僕たちが、今では互いを尊敬し合い、共創できる関係になっている。その事実に、時間の流れと人の成長を感じました。

僕は思うのです。料理とは、単なる消費される商品ではない。そこには、人の覚悟や思想、生き方が宿る。だからこそ、何を選び、誰とつくり、どう届けるのか。その「選択のチカラ」が未来を左右するのです。

ムッシュ、ありがとうございます。あなたが示してくれた道は、今も僕らの中で静かに、確かに息づいています。僕はその背中を追い続けながら、次の世代へとバトンを渡していきます。食の可能性を信じ、人と人が価値を共に創る世界を、これからも本気でつくっていきます。

師の教えは、形ではなく魂として残ります。
僕はその魂を胸に、今日も厨房に立ちます。未来をつくる一皿のために。

関連記事