相模原市の山里に佇む廃校の校舎。モダンとトラディショナルが見事に調和する大江宏氏の建築デザインは、広大な敷地とともに僕を強く魅了した。かつてここで多くの生徒が学び、成長したことを思うと、この場所に新たな命を吹き込もうというプロジェクトに深い意義を感じずにはいられない。

2月の視察を経て、いよいよ本格的にプロジェクトがスタートする。元麻布のオフィスで開かれた1回目のミーティングには、オーナー、建築家、デザイナー、支配人など錚々たるプロフェッショナルが一同に会した。オーナーの「迷ったらとんがった方を取ろう」という果敢なモットーに則り、この場にいる者全員が想像を遥かに超えるオーベルジュを創り上げようと意気込んでいた。

各分野のプロフェッショナルがアイディアを投げ掛け合う熱気に包まれながら、あっという間の3時間が経過。レストラン部門を担当する僕も、伝統と革新、地元の食材とフランス料理の調和など、様々な視点からコンセプトを提案した。建築家からは木をメインした斬新なデザインプランが示され、支配人からは宿泊施設に関する提案があった。

この日のミーティングを通して、すべての関係者がプロジェクトの成功に確信を深めた。かつて子供たちの夢が育まれたこの場所に、今度は大人の夢が宿ることになる。過去への敬意と未来への希望を合わせ持ったこのプロジェクトの行方に、期待しかない。